ハウルの動く城を見てきました。一人でレイトショーで。
激しくネタバレしてますので、注意してください。寸評はページの最後にありますので、それを見たい人は一番下見てください。
140分の長い映像を見させられた直後の感想。
「だから何よ?」
観終わって、素直によかったよかった、という気持ちがちっとも芽生えない。メインのラブストーリーも、紅の豚のほうがよっぽどよく出来てる。
ヒロインをおばあちゃんにすることで、「愛することとは何なのか?」を表現したかったんじゃないのかと確認したくなる。この映画では、結局相手を愛する心を表現できてない。断言。厳しいねぇ。
で、スタッフロール見ながら考えた。なぜ、140分も使って、俺の心になにも残せなかったのか(そう、何も心に残らない映画だ。実際思い出そうとおもっても大したことは思い出せない)。
見終わって「はぁ、よかった」と納得するには、ストレス(負荷)とカタルシス(崩壊)のバランスが重要だ。例えば水戸黄門を例に取ると、「ストレス=悪代官の悪行」であり、「カタルシス=印籠で懲らしめる」である。
それを達成するには、ハッピーエンドにするのがもっとも簡単な方法であるし、ハウルは実際ハッピーエンドだ。なのになぜ納得できないのか。
思うにカタルシスが不足しているからだと思う。ハウルでカタルシスとなりうる要素は、素人がぱっと思いつくだけで次のようなものが出るだろう。
(1) 呪いが解ける。
(2) 呪いは解けないが、ハウルと幸せに暮らす。
(3) ハウルが死ぬ。
(4) ヒロイン(ソフィー)が死ぬ。
で、んじゃ実際のハウルはどうだったの? って言うと、結局どれだか分からない。うやむやになっているから、ストレスの崩壊がなく、視聴者の快感に繋がらない。
その原因は、中途半端に途中で若い頃の見た目に戻るような描写がされているせいであることは間違いない。あの描写のせいで「ストレス」が貯まりきらない(「カタルシス」で崩壊させたとき、その前までの「ストレス」が大きいほど視聴者の得られる快感は増える)し、ちょぼちょぼと小規模のカタルシスが発生してしまう。
また、結局あのせいで「で、最後呪いは解けたの?解けてねぇの?」と分からないまま終わる。
もし製作者が「最後はどちらだったか分からないようにしたかった」というのなら、それは意図どおりにいっている。だが失敗だと思う(まぁもっとも「うわぁ、呪いが解けたぁ、ハウルありがとう!」で終わっても、それはそれでなんだかなー、ではあるが)。
さらに言うと、映画のテーマとストーリーの状況が、とても沿っているとはいえない。ハウルのキャッチは「生きる楽しさ、愛する歓び」である。
生きる楽しさ?どこに楽しさが?
愛する歓び?どこに愛の歓びが?
ハウルは生きることに四苦八苦している。なにか自分の中にある勝手なルールに沿って妙な使命感を帯びて生きている。はっきりいって勘違いな迷惑野郎だ(というかこの世界の魔法使いは全員勘違いな迷惑野郎なのだが)。しかもストーリーの最後では、頭がイッちゃったとしか思えないセリフを吐いて終わる。頭がイッちゃうことが楽しさだというなら、ある意味真実ではあるので仕方がないが、共感できない。
愛する歓びって、ソフィー→ハウルは、18歳の少女が美貌の男性に惚れてるだけで、ハウル→ソフィーは、その真実の姿を知ってしまっているわけで、要するに「歓び」っつーか、単純に一緒に住んでて情が沸いて、なんとなく愛し合っただけ。これが歓びか?
さらに戦争の描写。浅はかで稚拙。宮崎は戦争を描写できない。すでに説教くさい表現すらできない。
そしてハウルがなぜか戦場に行っては悪魔の力を借りて次々と敵味方問わずに攻撃を仕掛けるんだが……。その意味は結局なに? ハウルは「戦争反対!戦争なんかするやつは死ね!」っていう主張なんだよね? まぁ、頑張ってくれよ、としか言えないよな、実際。もっといい方法がいくらでもあるだろ、と。
後で分かることだけど、この戦争って、なんか王様の伊達酔狂でやってるだけの戦争らしいので、そんなにキレなくてもそのうち収まるから。町に落ちる爆弾をどうにかすることだけ考えてくれればいいよ。
あと、ヒロインの性格。
突然魔女に呪いかけられて老婆になったわりには、恐ろしい切り替えの早さで翌日家出する。とてつもない決断力。まぁ18歳の少女らしいといえばらしいから、それはいいか……。
かと思ったら、ハウルがダダをこねて「もう死んでやるー!」とか喚き散らすシーンで、なぜか家を飛び出し号泣。雨の中号泣。意味がわからない。まぁ18歳の少女らしいといえばらしいから、それもいいか……。
って、結局少女だから、っていう描写が、やっぱ浅薄じゃないでしょうかね。そこまで情緒不安定ですか? 18歳て。
正直いって、俺は最初の20分、ヒロインが家を飛び出すあたりで「おいおい」ってツッコミ入れて、60分を超えたあたりからはもう疲れてた。
エイリアンvsプレデターも疲れたが、これも同じぐらい疲れた。
まぁ宮崎映画なので、評価としては「もののけ姫、ふたたび!」って感じ。千と千尋の方がまだマシ。
最後振り返って、思うことはやっぱりキムタクの声優。あれは確かにキムタクにしてはうまくやってるけど、でも結局は木村が台無しにしてる感も残る。というか、もののけ姫のときも思ったのだが「俺は三輪明宏ショーを見に来たんだな」と思った。
ただ、ここまでボロクソ言っておいたので、1つ良かった点を。
やっぱり、ハウルの最後のセリフ。ソフィーがハウルに心臓を返すシーン。頭がイッちゃってるとしか思えないハウルのセリフ。
「あ、ソフィーの髪の毛が星色になってる!」
もうね、久々にイヤな笑いさせてもらいました。この脚本書いたの誰だよ、ちょっと俺の前に正座だよ。これは笑えた。
ていうか、なんか意味のよく分かんない映画だったな、今思うと。
ハウルの子供時代に行った意味はなんだったんだよ。ていうかハウルはそれ覚えてねーのかよ。ていうか「私は今ハウルの子供時代に来ているんだわ!」って説明セリフは何なんだよ。悲しくて泣けたよ。
荒地の魔女が心臓欲しがってた理由はなんなんだよ。サリマンのタバコ吸ってたのは何の意味があったんだよ。なんであの時だけ三輪明宏ボイスに戻ったのよ。なに、あのタバコ魔力あんの?
結局犬はなんだったの?
サリマンが戦争止められる権力もってんの?だったらアイツが戦争の首謀者じゃねぇかよ。しかもなんかただの気分で「ばかげた戦争をやめにしましょう」って。ばかげたとか軽々しく言ってんじゃねーよ。国と国が戦争になるのは、少なくとも軽々しい事情ではじめてるわけじゃねぇんだよ、ばーか。お前の言ってることのほうがよっぽどばかげてる。ま、つまりただの伊達酔狂での戦争だったってこと。国を疲弊させて楽しんでるだけのバカ王。サリマンもそれを楽しんでいた。が、なんかちょっといい話を犬経由で見せられて、それに流されて戦争中止。もうね、アホかと。
っていうか相手の国の王子は、一体なんなんだよ。穏健派で、国の中の強硬派の魔女に呪いでもかけられたのか? だったら国に帰ってもまた呪われるだろ。そうでなかったら、王子があっさり呪いかけられる国程度3日もあれば戦争に負けるだろ。
極めつけは、城から一度カルシファーを外にだして城をぶっ壊した後、もう一度建物の中にはいって「カルシファー、ハウルのところに連れてって!」って……。最初から城の状態で行け!アホかお前は!いやまぁ「この城がある限り、ハウルは私達のために戦うから」っていう説明セリフがあったけど……。
そもそもハウルの守るものってなんですか?城ですか? ソフィー、おめーだよ。おめーがいるかぎりハウルは守るため戦いますよ。それをあんた、ハウルがいない間に勝手に城壊してしまっては。城を壊すよりは、よっぽど自殺のほうがマトモな選択だ。
……っちゅーかんじで、まぁとにかく消化不良な映画でした。
■結論
少し、脚本練ってから映画を作りましょう。
評価:0/6 ☆☆☆☆☆☆ 寸評:何が伝えたいのか分からない。
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