今日は、そのS.A.C.についての感想(ネタバレ含む)。
結論から言うと、ラスト3話はオチが弱い。制作の時間不足感が否めない。
あらすじは次のようなもんだ。政の大物に手を出そうとしている公安9課の行動がかぎつけられ、公安9課は解体されそうになる。公安9課員からの情報伝播を恐れ、軍隊を動員して課員すべての拘束に乗り出す政治家。荒巻課長は思慮を巡らせ、公安9課を救う方法を考え、実行する。
このあらすじにしては、ちょっとストーリーにひねりがない。
まず、スキャンダルの発覚を恐れた政界の大物が、軍隊を動員してまで公安9課を制圧したにもかかわらず、そのスキャンダルがあっさりメディア経由で暴露される点が納得がいかない。この情報戦は、かなり面白い対決(暴露したい草薙 vs 封じ込める軍部)を描けるはずで、それを入れるべきだったと思う。
次に、草薙素子を「死んだこと」にしておいた意味がない。すでに死亡しているはずの草薙素子からハッキングを受けている、という描写があってもよさそうなもんだ(葵との会話シーンに混ぜたり)。
あと、荒巻が「なんとしても生き延びろ」という割りには、別に公安9課の人間が軍に捕まっても殺されたりしない。で、荒巻の政治力であっさり釈放になる。
また演出については、ご都合主義的な面が垣間見えるなど煮詰まっていない。
バトーがいきなり強化外骨格の乗組員の目をハックできている点は、かなり「ぇー」な感じだ。目をハックできるなら、手をハックして自決させればよいだろう。ていうか防壁無しに軍人相手にハック仕掛けて成功するって、どんな勇気で、どんな能力だよ、と思う。ていうかそんなことできるなら最初から銃撃戦すんな。
ポケットに時計を入れておいたバトーが、意識を失うほど強化外骨格に踏みつけられても時計は壊れていない。
あと、明らかに時間不足だと思うが、左手の擬体が壊れてしまったバトーが、飛行機に乗り込むシーンでは左手が復活している(たぶん右手が無い)。
とは言いつつ、タチコマには泣いたし、そこそこよくまとめてはある。しかし視点が「結局、笑い男事件とはなんだったのか」を描くことに終始しており、しかもその結論が「個の集合体という群集心理」という笑えないオチというのはどうなんだと思う。
それらをまとめて「オチが弱いなぁ」と表現したわけだ。まぁこれはしかたがないので2nd GIGでも観て心を和ますとしよう。
ところで、攻機は「世界設定の視聴者への隠匿とチラ見せ」を好んで行うアニメだと思う。そしてその狙いに俺は見事にハマるタイプの人間なのだが、これは観ているやつみんな付いていけてるのだろうか? かなり想像力というか妄想力がないとあのアニメの話の展開には付いていけないと思う。
例えば、突然「先の大戦では」というセリフが出てくるが、これは第三次世界大戦が行われたという事実をまったく述べることなく、突然当たり前のように出てくる。これを分かれというのは、かなりオタクの素養がないと難しい。
「中国政府のキム外交事務次官」というセリフが出てくるが、キムは姓「金」の朝鮮語読みである。つまり、このセリフから「朝鮮半島は中国の一部としてすでに併合されている」という事実を読み解かなければならない。
「九州で起こった本当のこと」といったセリフがあるが、これを聞いて分かる事実は、日本と中国が戦争をしたということ。さらに想像するならば、中国が九州に核を落とし、上陸して虐殺行為を行った、という程度まで妄想することでかなり楽しめる。九州に慰霊塔が建つぐらいだから、核ぐらいの規模で攻撃されているはずだ。
「米帝」という単語から、アメリカは帝国になっていると気づかないとならない。
「ソ国政府」という単語から、ロシアはふたたびソヴィエトという名前を名乗り、おそらくソヴィエト共和国になっているだろうと想像しないといけない。
「まとり」と言われたら、「麻薬取締官」だと気づかないといけない。
こういったことを言い始めたら、んじゃ「電脳」とは何だ、「ゴースト」とは何だ、「擬体」「暗号通信」「熱工学迷彩」などなど分からない単語はいっぱいある。
オタクは「俺はここまで分かってるんだよ~ん、えっへん」というしたり顔をしたがる。オタクでなくとも、視聴者向けトリックが隠されたサスペンス映画を見た後に、映画館を出るまでに「コレコレが隠されてるの分かった?」などとしたり顔で言うヤツと一緒だ。ま、つまり俺のことだ。
俺と同類の人種にとっては、これほど面白いアニメはない。けど妄想力がそれほどでもない人にとっては「よくわかんないアニメ」で終わると思うんだよ。んで、みんなそんなに妄想できてるのかが分からないんだよね~。ほんとにみんな読み解けているんだろうか?
2019/01/30 追記
- ほし: ★★★★★ (5/5)
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