【★4】X-FILES 2018 は、想像以上に X-FILES の正統進化作品だった【感想】

2019/06/03

★4 映画ドラマ批評


ほし ★★★★☆(4/5)
寸評 1990年代に大流行した超常現象をテーマにした刑事ドラマ「X-FILES」の現代版。20年前と同じモルダーとスカリーが主人公で、ドラマのテイストも昔のまんま。これこそX-FILESファンの求めていた構図であり、しかしただの焼き直しではなくオムニバス形式の各ストーリーにそれぞれオリジナリティがある。
すごく面白いストーリーがある反面、かなり面白くないストーリーもあったので減点。
面白くない一因として、クリス・カーターおじいちゃんの「現代についていけてない感」があるように感じた。


そもそもX-FILESって今伝わらないのでは

X-FILESが世界中でヒットしていたのは1994年~1998年ぐらい。日本でも大ブームとなり、当時主流だったレンタルビデオ屋では客同士で取り合いとなるレベルだったという話。
連日「貸出中」の札がかけられてね。
まぁ実際にその光景見たわけじゃないけど、そんぐらいブームだっていう事よ。
ブームが大きかったので、ついに地上波で放送されるようにまでなってね。

でもそのブームも1990年代末には下火になって、それ以降は多くの日本人の目には触れなくなっちゃった。
そうなると、もう今30才未満の人にはもうほぼX-FILESの話通じないってことだよね。

悲しいなぁ。日本における海外ドラマブームの火付け役なのになぁ。俺全話DVD持ってるのになぁ。

だけどX-FILESを観たことないなら、ぜひとも一度観てほしい。主人公のモルダーとスカリーの掛け合いが面白くも気持ちいいからね、ぜひ体感してもらいたいね。

今ならhuluやu-nextで全話観られるらしい。

U-NEXTならX-FILES 2018 も見られるゾ


X-FILESのストーリーは2種類ある

以前のX-FILESもそうだし、最新作のX-FILES 2018もそうなんだけど、ストーリーが2種類ある。
1つは、政府の陰謀・宇宙人がらみの継続的ストーリー(これをX-FILES公式では「ミソロジー」と呼ぶらしい)。
もう1つは、ただの超常現象のオムニバス

モルダーは宇宙人がいる事を政府が隠していると硬く信じていて、それを暴くんだ! という継続的なストーリーがあって、これは全シーズンを通しての大きなテーマとなってんのね。
で、それとは別に全く関係ない超常現象の話が1話ないし2話完結でオムニバス形式に描かれる物もあるのよ。

ぶっちゃけミソロジーは面白くない

これね、シーズン5あたりから急速に宇宙人がらみの話がつまんなくなっていってね。
そこから今までずーっとつまんない。
だってもう、なんか制作側も収拾ついてない感じするもんね、色々設定がインフレしすぎて。
そりゃ「無敵兵士」なんて出しちゃったらもうそこから話展開するの難しいやん。だって宇宙人のテクノロジーで無敵なんやもん。

なのでミソロジーはあまり見る価値なし。ミソロジー単品で評価したら★2か★3か……ってトコだね。

オムニバスは最高

まぁそういうわけで、昔っから宇宙人がらみがつまんないんだけど、逆にオムニバス形式のストーリーは最高に面白い。
X-FILES 2018でも制作側がそれが分かっているのか、宇宙人がらみの話は最初と最後だけ。それ以外はオムニバス形式のストーリーなので、結構楽しめる。

オムニバスの何が最高か

このX-FILESが何が素晴らしいかというと、オムニバス形式の話で発生した事は、次回以降に引き継がれないという点。
次回に引き継がれず、また以前の話との整合性を合わせる必要もないので、その時の思いつきで面白そうな事をテーマにできる。結果として一話一話のキレ味が増す
素晴らしい割り切りだと思うよ。制作側の手抜きが、実は大きな魅力の基になっているなんて素敵な話やん。

いろんな人が脚本を書くから面白い

ドラマの中で長いこと超常現象モノばかりを解決していくと、そのうち当初の「未解決事件の原因を調べたら超常現象だった」というテイストが薄れて、「最初から超常現象だと決め打ちしてストーリーが展開する」という事になりがち。
「FRINGE」もそうだった。
「クリミナル・マインド」だって、途中から「犯人の犯行時の精神を追体験する」という工程はなくなり、「プロファイリング」もおざなりになっていった。

普通はそういうモンだと思うのよ。

でもX-FILESは違う。
舞台設定として「モルダーとスカリー」が用意されているけど、それをどう使うかは自由。
舞台設定だけが共有されていて、その上で色んな脚本家がストーリーを書く。
プロトコルとして「モルダーが超常現象の可能性を検討し、スカリーがそれを否定するため一緒に捜査する」があるため、いつまでもこのお約束が崩れない。
お陰で毎回新鮮なんだよね。

おきまりの構図
おきまりの構図

「今回の事件と似たような事件が以前発生しているんだ、スカリー。1982年、アラバマでの人体発火が疑われた事件さ。地方判事が判決文の補足で人体発火したとしか考えられない、と記載している」
「モルダー、わかってると思うけど人体発火なんて有り得ないわ」
「そうかな。なら、なぜ政府は82年の事件を20年間も『軍事最高機密』に指定していたんだと思う?」
「……」

ほぉら、目に浮かぶでしょう。2人の、表情も、口調も、背景の "I WANT TO BELIEVE" のポスターも。


I WANT TO BELIEVE
"I WANT TO BELIEVE" のポスター

この2人の舞台設定を用いて、色々な超常現象やらサイコパス殺人鬼やらが思いのままに描かれていくんだから面白いんだよなぁ。

X-FILES 2018のオムニバスはどうだったか

正直に言って、かなり面白いのとそうでもないのが両方あった。7割は面白かったが、3割はつまらなかったね。

クリス・カーターおじいちゃんのセンスが古くなりすぎた

でもなんか仕方ないかなぁというか、クリス・カーターおじいちゃんの考えた「現代はコンピューターに支配された社会」みたいな描写が、いくらなんでも古くさすぎるんだよ。
そもそも「このサーバーにアップロードされているデータを消してくれ」って言われてさ、物理的にビルに侵入して、物理的にぶん殴って壊そうとするなんて有り得ねぇワケじゃん。そんなんバックアップあるに決まってるしさ。

おじいちゃんの考えるサーバー
おじいちゃんの考えるサーバー(青くライトアップ)
 
しかも、なんかサーバールームの鍵を開けたら、なんか青いLEDでライトアップされたサーバーがせり上がってくるとかさ、有り得ないから。なんでそんな装置付けたの。普段の運用で絶対に要らないし、邪魔くさいよね。

おじいちゃんの考えるサーバー2
電源OFFしたら赤いLEDでライトアップ


「ネットで個人情報がぶっこ抜かれてて、もう我々は企業の思うがままさ!」みたいなストーリーで、「AIの学習を間違えた結果、チップを払わない客は家に行って物理的に攻撃するようになった」みたいなあらすじなんだけども、まーそんなわけない。実にそんなわけない。
だってたかだか数ドルのチップ取るために、建物はロックアウトするわ、ドローンは100個も200個も動員するわ、まーーー費用対効果最悪。AIが仮に間違えた方向に学習したとしても、費用対効果が悪ければその方向での取り立てはしなくなるでしょ。

色褪せないコンビは素晴らしい

ま、そんなこんなでクリス・カーターおじいちゃんの昭和的センスで描くコンピュータについてはダメダメだったんだけども。
それ以外は概ね面白く、往年の X-FILES を彷彿とさせる気の利いたホラー要素や気味悪いサスペンス要素が散りばめられている。
モルダーとスカリー、未だ輝きを失わず。天才的プロットだなと心から感心した次第でありんす。

ミソロジーのしょーもなさ、おじいちゃんのセンスの古さは割り引いたけどやっぱりコンビの掛け合い、立場を明確に塗り分けたプロットなどなどの引き込まれる世界設定がスゴい良いので★5ッスね。


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