「新しい生活様式」で、鉄道路線の整理縮小があったりして

2020/06/26

ニュース

緊急事態宣言が終わっても警戒ムード

先日「緊急事態宣言」とやらが解除されて、ようやく家に引きこもる生活からオサラバ、となるかと思ったんですけども。
東京アラートだの、ステージ 2 だの 3 だの、ニュースでは毎日感染者数の発表をしているし。小売店ではアルコール消毒しなきゃいけないし、電車の窓は夏だというのに開けっ放し。
まだまだ警戒ムードは継続中という感じね。

新しい首都圏の鉄道網はコレかもしれない

いきなりだけども、自粛とリモートワークの普及によって、鉄道の輸送人員がすごく減ってるらしいじゃん。
恒久的に輸送人員が減るなら、需要の低い赤字路線が都内にも生まれる可能性があるってことだよね。赤字路線だったら、都心の路線が廃線って事になるかもしれない。

で、仮に輸送人員が 3 割~ 4 割減ったら、整理縮小される路線ってどこだろう? っていう仮定の話を考えてみようってのが今回のお話。

念の為言っとくと、本当に輸送人員が 3 割~ 4 割減るかどうかも、仮に減ったからといってどういう未来が来るかはまだ誰にも分からない。
だけど「都心の路線廃線」があったら、面白そうじゃんっていうだけの話ね。
まぁそうならないようにするとは思うのだけれども。

代替手段のある路線は廃止

東京の地下鉄は、そりゃ恐ろしい数走っとるワケ。それも駅と駅の間が 500m ぐらいしか離れていないような路線がしこたまあるじゃん。
輸送人員が減ったら、そういう路線から整理統合されていくと思うんだよね。代替手段があるんだから、止めやすい。たとえば「副都心線止まったら山手線で移動するか」みたいな事ができる路線が多いって意味ね。

そういう前提で、今の東京の路線図を見てみよう。

今の東京路線図

そこから、代替手段があって重要度が低そうな路線を消したら、こういうカンジになるんじゃないかな、と。

予想の東京路線図

ん、結構消したんだけど意外と大丈夫そう。
とりあえずどういう理屈で、どの路線が消えるのか残るのかを書いてみる。

銀座線

全廃

全廃予想の銀座線

日本最古の地下鉄。「土木学会選奨土木遺産」や「近代化産業遺産」にも指定され、かつて使われていた車両が「重要文化財」に指定される程、日本にとって重要な地下鉄路線

しかしその裏腹で路線の規格が古く、現代の大量輸送にマッチしていない。
車両は小さく、 6 両編成までしか運行できない。また電化方式が第三軌条方式で、この方式は銀座線と丸の内線でしか採用されていない。つまり他の鉄道会社との直通運転にも不向きで、これからの積み増しは極めて困難。
さらにさらに、今となっては渋谷~赤坂見附間は半蔵門線に完全に重複赤坂見附~上野まではほぼ千代田線に重複。上野~浅草間のためだけに路線を残しておく価値は薄い(つくばエクスプレスや都営浅草線で浅草に出ることも可能)。

旅客輸送客が減った場合、もっとも優先度が低い路線は残念ながら銀座線だろう。

丸ノ内線

新宿~池袋間廃線(新宿~荻窪間は残る)

丸の内線の廃線予想区間

丸の内線も銀座線と並んで極めて古い路線。銀座線と同様に、小さい車両を 6 両編成でしか運行できない。第三軌条方式であることも銀座線と同様にマイナス。
というわけで、銀座線と共に廃線候補ではあるのだけれど。だけど全線廃線は免れるかもしれない。
丸の内線の新宿~荻窪間、方南町支線だけは残るのではないだろうか。

路線図を見る限り、ここを止めると中央線~京王井の頭線の間が鉄道空白地になってしまう。
ここは中央線の駅でいうと中野や高円寺、阿佐ヶ谷、また京王線の駅で言うと笹塚や永福などを抱えていて、集合住宅密集地。ここの輸送がすべて中央線と京王線に移行するとなると混雑激化必至であるし、そもそも駅までの距離が遠い。バス路線をこの通そうとすると、まさかの環七にバス路線増加ということになり、道路交通にも悪影響必至
そこまでのリスクは背負えないよ。

幸い中野富士見町に車両基地があるし、新宿駅には折り返し施設が元々ある。ノーコストでこの運用に移行できるので残しておくのが得策だろう。

南北線

全廃

全廃予想の南北線

銀座線や丸の内線とは対照的に、かなり新しい路線。
東京メトロのページを参照すると、利用客数がかなり少ない。
https://www.metro-ad.co.jp/common/pdf/media/data/data_all_2019.pdf


路線別の輸送人員で最下位の南北線

まぁそれもそのはず、北側では東北線、山手線に近傍。駒込より先は三田線に近傍。飯田橋からは路線選びたい放題なうえ、目指す場所が目黒という地味この上ないターミナル。
南側では大江戸線や日比谷線と近傍だし、取り立てて南北線を選ぶ理由に乏しい。
まぁ東急目黒線直通運転だけは魅力的だが……。
東急目黒線は結局東急東横線に接続するので、だったら副都心線方面に出て東急東横線直通運転の方に乗った方が便利。そっちは急行や東横特急もあるし。

埼玉高速鉄道と直通運転をしているので、全廃されたら埼玉県はズッコケちゃうと思うけど、結局赤羽岩淵で赤羽駅に乗り換えできる。
京浜東北線に接続しているんだったら別に南北線無くなっても困らないじゃん、ってレベルなのが悲しいところ。

三田線

目黒~水道橋間廃線(水道橋~西高島平は残る)

赤枠が廃線予想、緑枠が残る予想の三田線


南北線と同様に、地味なターミナル目黒を抱える三田線。東急目黒線と直通運転をしているのも一緒。
目黒~水道橋は山手線や総武線に近傍。ちょっとだけ遠回りにはなるけれど。利用客数が減った前提であれば、ほんの少しのショートカットのためにコストをかけたくはない。

逆に北側の水道橋~西高島平は東北線や埼京線と東武東上線の間を縫うように鉄道空白地を埋めるように路線が伸びておりオリジナリティが高い。板橋区の大量の住民移動を担っているため、ここを止めてしまうと東武東上線や近隣道路交通が死ぬ。
幸い志村に車両基地があるため、この区間だけの運行への転換も比較的低コストで実現できそう。

東京モノレール羽田空港線

全廃

もともとターミナルが浜松町という使いづらくてしょうがない場所にあるのが痛い。
JR が子会社にしたものの、このモノレールのせいで京浜東北の快速を浜松町に止めざるを得ない。京浜東北線の利便性をも落としている。
京急が空港線を持っており、そちらのターミナルは品川。うーん使いやすい。さらに京急は空港線の運賃を劇的に値下げした。
もう空港利用客輸送は全部京急でいいだろ、っていうね。

もはや途中駅の流通センター・昭和島・整備場の通勤客のためだけの路線になってしまう。
そんな少ない需要だったら、別にバスで代替できるのでは……。
というわけで京急に利便性でも速達性でも料金でも負けてしまった東京モノレールは、その長い歴史にピリオドを打つことに……。

重複路線があるのに残ってる路線あるよね?

さてはて、色々と理由をつけて廃線候補を挙げていったけれども。
どっかと重複しているから、って理由で廃線するんであれば、他にも重複している箇所あるよね? って意見もあるでしょうよ。
でも、たぶん消えないだろうって理由が思いついたものは残してあるんだよね。その理由についてもついでに触れていこうかな。

浅草線 泉岳寺~西馬込

そもそもココ要る? って話。
コロナ関係なく「要るか?」って話だけどさ。いやー、要るよね。

「なんで中途半端に西馬込までなの? もっと伸ばして東急につなげりゃいいのでは?」みたいな気がするけれども、つなげたところでねぇ。相手が東急池上線や東急多摩川線だよ? あんまり利用客見込めないよね。それに都営が東急の客奪っちゃ民業圧迫だし。
そもそも馬込あたりの鉄道空白地を解消したくてあそこ通してるワケで、まぁ要るんだって。

ま、それよりなにより、馬込車両基地のために絶対必要なんだけども。
都心で車両基地用の土地なんで、今更取得できないじゃん。いくらかかるんだって話。なので既存の基地のためにも、あの路線は残さないといけない。
ま、営業運転終了しちゃってもいいんだけど。どうせメンテナンス費用払うんだったら、住民の利便性を高めるためにも営業運転続行するのが正しいんじゃないかなぁと。

京成線 上野~青砥

京成上野駅ね、不便だよね。JR や地下鉄の上野駅から遠くてさ。地下道があるわけでもなし。
青砥~上野の京成線ってうねうねしてて運行速度もかなり遅いしさぁ、浅草線・京急線と直通している押上方面の方が主力っぽいじゃん。
しかも常磐線に近傍。堀切菖蒲園駅近隣住民と町屋駅近隣住民しかありがたみを感じない路線。うーん、要る? って思うんだけど。

まず利用客目線で言うと、上野から浅草線に出づらい。上野から御徒町で大江戸線に乗り換えて、次に蔵前で浅草線に乗り換えてようやく京成線に乗れない。山手線の北側に行きたい人にとっては京成線が日暮里まで行かないと非常に不便になる。

次に京成側の都合。
京成の乗降客数トップ駅は、 JR との乗り換え駅である日暮里駅。この日暮里駅を捨てるなんて、とんでもない! 京成にとってのドル箱を捨てられるわけがない。
というわけで京成上野駅のショボさ、使いづらさ、旅行速度の遅さを感じながらもこの区間は残る。

副都心線

もっとも新しい地下鉄路線。
乗降客数は南北線と並んでメトロ最低クラス
だったら南北線を全廃したように、副都心線だって全廃すればいいのでは?
路線としても池袋から新宿三丁目を経由して渋谷、とほぼ完全に山手線に重複しているのだし。

しかししかし。
この路線のおかげで、東武東上線は埼玉県民の象徴、池袋をターミナルとすることなく、新宿・渋谷方面に歩を進めることができている。
しかも「 F ライナー」という速達列車を設定することで、「埼玉からみなとみらいまで乗換なし!」というナイスなキャッチを打てる。行先表示板には堂々と「元町中華街」を掲げて

有楽町線で東にもいける、副都心線で南にも行ける。東武にとっては、路線価値を高める素晴らしい路線。
しかも有楽町線と副都心線方面で池袋近辺で複々線になっているので、ダイア的にも運行編成を増やせる。
こんな素晴らしい路線を東武が手放すワケがない! 東京メトロが苦しくなり副都心線をやめたくなったとしても、それならば東武が運行免許を取得して買収してでも続けたい路線なんじゃなかろうか。

というわけで、副都心線は残ると思われ。

日暮里・舎人ライナー

これも新しい新交通システム。正確に言えば鉄道じゃないけれど、専用軌道を走る公共交通機関ということで触れておこうかなと。

地下鉄引くほど需要がないだろうと判断したから新交通システムなんだよね? だったら需要ないんだから運行やめちゃえば? って思うじゃん。

路線図みて貰えば分かるけど、この辺は完全に鉄道空白地。そのせいで、今めちゃくちゃ需要が高まってしまっていて、混雑率が高すぎるのが問題になっているほど。
ただし、通勤・通学のピーク需要だけが突出して高くって、日中の需要はほとんどないらしい。おかげで赤字運営なんだと。しかも運行システムの制約や、車両基地の関係で増発は難しいらしい。だから問題だらけなのは確かだけれど。

とにもかくにもピーク需要が高いという点から、停める必然性が無い。

なんでこんな仮定の話を書きたかったのか

ここからは、なんでこういうの書きたくなったかっていう私の心境の話。蛇足ではあるので、読み飛ばして OK。
まぁでも「そういう仮定をしても面白いな」って思わせるニュースの数々があったんだよ、っていう説明ね。

日立の取り組み

こんな時流だから、相変わらずリモートワーク継続中なんてケースも多いでしょうなぁ。
そんな中で日立製作所が大胆な方針を打ち出して話題になってたりする。

日立、在宅勤務を標準に 手当の充実やリモート環境の整備図る 感染症や災害に強い体制へ

日立がこの基本方針で本当にちゃんとやれるのならば、そこから仕事を請け負っている常駐型の SE なんかもかなりの割合が在宅になるじゃん。日立系の業務をしているシステムエンジニアの数は相当なもんだろうから、一気に業界標準となりうる力を秘めているよね。

リモートワーク化による影響

経済産業省の資料によると、日本国内の IT 技術者はおよそ 90 万人(2010 年時点)とのこと。たったそんなもんなのか、っていう驚きもあるけれど、本題はソコじゃなくて。

これら IT 技術者は、リモートワーク化に先鞭をつけていくと思うんだよね。で、この IT 技術者がリモートワーク利用率が高まると、リモートワーク環境のためのソフトウェアが急速に整備されていくことになるハズなのね。
そうすると、 IT 関係じゃなくてもリモートワーク可能なハードルがどんどん下がっていくと思うのよ。

だから、今後世の中にリモートワークっていうのはもっともっと普及していくと思うんだよね。だってソッチのほうが楽だし効率いいってみんな気付きつつあるし。

そうなると誰が困る?

「社員の前で朝礼をするのが唯一の楽しみのワンマン社長」は、人生の生きがいを失って相当困るとは思うけれども、ココで言いたいのはそういうことではなくて。
だってそこで長渕剛の歌から引用したオレ流の訓示を聞かされてウンザリしている側の社員はハッピーになるわけだから、社会全体トータルとしては合計幸福量はむしろ増えるやん。

今どきそんな社長いるのか? って話はおいておくとして。

駅前の店舗、不動産……

移動する人間の数が減るってことは、当然「駅前一等地!」っていうのが価値低減していくよね。となると、そういう土地の価値に関連する業種がまず真っ先にダメージを受けていくことになるだろうね。

駅前の家賃払ってる店舗は軒並み困る。で、そうなるとテナントが撤退していくから家賃は下がる。そうなると不動産屋や大家は収入が減っていく。
土地価格が下落していくので、タワマンの価値はそれを上回る速度で下落していく。不良債権の回収もままならなくなって銀行も貸し倒れ損金が増えていく。

土地価格下落スパイラルに陥って、困る業種は多岐にわたるハズ。

日本の鉄道網、維持できなくなるのでは?

でも、その中でも最も直接的に損害を受けるのは公共交通機関だと思う。 JR 東日本は輸送人員が 3 割程度減ると連結利益がゼロになる計算らしい。

https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2004/25/news008_4.html
JR東日本は鉄道事業が3割減収になると連結営業利益はゼロになり……

まぁ正確には「鉄道事業の 3 割減収」なので「輸送人員の 3 割減少」とは直接数字は噛み合わないのだけれど、まぁ概ねその程度で赤字転落ということになるってことね。

他の私鉄業者はもっと余裕がある会社が多いようだけれど、その実、どこで利益をあげているかと言えば不動産業やリゾート業。もろにコロナの影響で減収となりそうなジャンルで稼いでいる。

東急なんかその最たるものだから例にとってみるけれども。
ココを見ると、 2018 年度の営業利益内訳は以下の通り
  • 交通 351 億
  • 不動産 283 億
  • 生活サービス 289 億
  • ホテル・リゾート 32 億
交通と不動産が減収となると、私鉄だって苦しくなるのはハッキリしている。現に 2019 年度はコロナの影響で交通は 81 億の減収(コロナ騒ぎが始まったのは 2 月だから、たった 2 ヶ月で!)だし、ホテルに至っちゃ 47 億の減収で赤字転落してる。

東京メトロなんか、交通による利益しかないんだからもっとダメージは激しいと思うんだよね。

仮定が現実にならないことを祈る

まぁそんなこんなで、鉄道路線の整理縮小っていう仮定の話したいなって思ったわけ。
最近はもう人の往来はコロナ騒ぎの前に戻りつつあるらしいけれど、これから先どうなるかは誰にも分からない。
個人的には、早く従来どおり平気で外を出歩くような「生活様式」に戻って欲しいのだけれどね。そうなるためには、何かと社会的ハードルが大きいからね、どうなることやら。

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