何があったか?
天下の大マスメディアであるところの東スポが以下のように報じておるニュースがあります。
「聞けよお前!」「家帰るど!」ひろゆき氏 GoTo見直し問題で意見相違の専門家を激怒させる
問題のシーンは youtube で適当に「ひろゆき 宮沢」で検索すれば出てきますんで、興味ある人は検索してください。
当の本人の言葉は見つかりませんでしたが、他の人のブログを読む限りでは「アベマがアウェイだった」ため、つい激高してしまったと反省しているようです。
でも、宮沢准教授がブチ切れてしまう理由は「アウェイだったから」ではないです。
なぜブチ切れてしまうか?
原因はたった 1 つ、「宮沢准教授にディベート力が無かったから」です。なんかザックリしてるなってカンジですか? ならば、少し細かく説明しましょう。
そもそもどういう議論だったか
まぁ議論というところまで到達していなかったんだよね。だからすごく説明しづらいんだけども……。
二人は、以下のような水掛け論してたのよ。
ひろゆき「東京から来た人が札幌の風俗でクラスター発生させたんですよね」
宮沢「東京から来た人が原因って、それ確定情報なんですか?」
ひろゆき「え、じゃ逆に東京から来た人じゃないって確定情報あるんですか?」
宮沢「無いけれど、 GoTo トラベルが原因で感染拡大させた可能性は極めて低いというデータが出ている」
ひろゆき「 GoTo トラベルのせいで拡大している可能性が 0 % って言いきれないなら、GoTo を止めた方がいいんじゃないですか?」
で、これを続けてたら宮沢ブチ切れ、みたいな。見ているコッチとしては「え、何にキレてるの君は」ってカンジだったけど。
この低レベルな言い合いの原因は
見ていて分かるとは思うけれど、この言い合いって極めて低レベルなんだよね。「東京が原因って言いきれるの?」
「じゃ、東京が原因じゃないって言いきれるの?」
それをただ言い合ってるだけ。まぁどっちも言い切るのは不可能なんだけど。
さて、なぜこのような低レベルの言い合いになってしまったのでしょう?
理由は、ひろゆきが極論を仕掛けたから。
ひろゆきが自分の主張が正しいと思わせるために仕掛けたディベート的手法なんだよね、コレって。
で、宮沢はそれをくみ取ることができず、低レベルの水掛け論に激怒して話が先に進まなくなってしまったという話。
ここで宮沢にディベート力があれば、相手が仕掛けてくる極論も「ただの戦法」と受け取る事ができるし、怒ることもなかったんだよね。
ちょっと話ズレるけど、つまりこれってひろゆき的にも自分の話したいところまで至らなかったから失敗ではあるとは思う。けれども「ひろゆき vs 宮沢」という構図だけを切り取るとひろゆきの圧勝という結果は拾えたからまぁいいや、って気分になっているかもしれない。少なくとも僕がひろゆきの立場だったらそう思う。
そもそも、ひろゆきが主張したい事とは?
この言い合いの前にこう言ってる。
- なぜ旅行業だけを助けるの? 医療・漁業など困っている業種はたくさんある
まずこれが彼のベースにある考えだと分かるんだよね、見ていれば。
また、他の動画だからその場で把握することは不可能だけれども……
この動画の 7:00 ~
(時間指定リンク
【新型コロナ】「旅行と飲食業だけ助ければ良いんですか?」“感染対策と経済の両立“何を優先すべき?ひろゆきが物申す【緊急事態宣言】【GoTo】 )
ではこう言ってる。
- 100 兆円の予算が確保できたんだから、そのお金を配ればとりあえず死なない
- ワクチンを待って平常運転に戻ればいい
- 演劇・ライブとかの業種は助けてない
つまり、ひろゆきが主張したい事は簡単に言えば以下。
- 旅行業助けたいなら、お金配れば良くね? 人を移動させる意味なくね?
- お金配れば、旅行業以外の困っている業種も助けられるんじゃね?
なぜ、ひろゆきは極論を持ち出す必要があった?
ひろゆき的には、そもそも論として「 GoTo トラベルで旅行業だけ助ける」という事に疑問があるワケ。対案として「 100 兆円も確保してるなら、それ単純に配った方がマシ」という意見があると。
で、それを単純化して伝えるために極論を持ち出すのが最適解だったと、それだけの話。
自分がひろゆきと同じ立場になったと考えてみて欲しい。
ウイルスの専門家が出てきて「 GoTo トラベルの影響は軽微です。コレコレこういうデータからもそれが読み取れます」みたいな話に持って行かれるとするじゃん。その時、ウイルスについては素人の自分が「 GoTo やめた方がいいですよ」っていう意見を通したいとき、どういう主張する?
極論持ち出すのが良いんだよね。
「 GoTo によって 1 人でも 2 人でも感染者が増えるのであれば、それは止めた方がいいですよね」
という極論に。これは反論するのが難しい。命は大事ですよ~、みたいな事を言ってるからさ。数の問題じゃないって言い張れる。
どんなに統計的に影響が軽微だというデータが出たとしても、必ず「それでも影響がゼロじゃないんだから、そもそも人の移動を伴う補助政策じゃなくて、単純に補助金配れば良くないですか? わざわざ感染者拡大させながら補助する必要ありますか?」って言葉に繋げられる。
つまりこの極論は「絶対に言い負かされることが無い理屈」なんだよね。
だから、ひろゆきの手法はディベート的にうまい。というか、そう言うしか無い。他の選択肢は、たぶん無いだろうな、っていうような状況。
宮沢准教授はどう言い返すべきだったか
ひろゆきの上手なディベート的誘導手法に対して、宮沢はどう対処すべきだったか? って事まで考えて今回は終わりにするけれども。そもそも相手の話を聞く
最も大事なのは「相手の主張を聞く」こと。宮沢は、そもそもディベートうんぬんのレベル以前に対話が出来ていなかった。かなり低次元な人間だなという印象を強く見ている側に刻んでしまった。それを避けるのは、まず大前提としてやらないといけないんだけれども。
極論をいなして、自分の議題を提示する
次に、相手の極論をいなす事が大事だった。「じゃ GoTo トラベルが原因じゃないって言いきれるの?」
って話になったときに、さっさと低次元な言い合いを切り上げること。
「 GoTo トラベルが原因かもしれないし、そうじゃないかもしれない。それって今ここで話してても意味ない話ですよね」
と切り上げて、自分が話したいことを打ち出す。
「私がここで話したいのは GoTo トラベルが感染者をどれぐらい増やしたのかっていう割合の話です」
みたいに言い切ることで、そこを議題としたいと打ち出す。
そして、その議題から逸れそうになったら「その話は今してない」って戻す。
こちらの主張を認めさせつつ、別のところに問題があるように誘導する
それでもなおしつこく「影響ゼロじゃないですよね」と来られたら、ハッキリと「影響ゼロじゃないです」と認めて、相手の話を最後まで聞く。そして改めて反論する。
ひろゆき「影響ゼロじゃないなら、 GoTo トラベルをやめてお金配ればいいんじゃないですか?」
宮沢「 GoTo トラベルは、半分は消費者負担だから経済効果は単純にお金配るより倍の効果が出ます。 GoTo トラベルによる感染拡大は限定的というデータも出ており、感染拡大は他の要因の方が圧倒的です。なので GoTo トラベルに問題点があるとすれば、旅行業界しか救われないという不公平感だけだと思います。それは政治的問題なので、別途議論が必要でしょう」
これによって、こちらの主張したい「 GoTo トラベルによる感染拡大は軽微」を認めさせつつ、 GoTo トラベルには別の政治的問題があって反対意見がある、という方向に持って行ける。
ウイルス学的な見地からは、別に GoTo トラベル止める必要がないという主張を引っ込めなくてすむことになる。
ただ難しいけどね……
ただ、それをあの場のアドリブで完璧にこなすのはかなり難しい、というかひろゆきぐらいディベート力が高くないとできない芸当だろうとは思うけどね。
逆にいえば、ひろゆきをディベートの逆側の意見でしゃべらせたら、こういう事をしたと思うよ。
ま、そういうことで「宮沢にディベート力が足りなかった」というのは、そういう意味です。
議論する、ディベートするっていうのは難しいね。日本人はそういう能力足りない人がとっても多いな、と。そういう感想を抱いたね、このニュースから。
2 件のコメント:
comment id : 2832849342363938463
宮崎か宮沢か たぶん単純ミス どちらかに統一して
comment id : 1032028377866370445
ご指摘ありがとう! 宮沢に修正しました。
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