最近再び注目を浴びるベーシックインカム
なんだかコロナ騒ぎの影響もあって、最近「ベーシックインカム」の話題がそこかしこで取り上げられるようになりましたなぁ。今回のエントリは、そんなベーシックインカムについての話。
ズバっと分かりやすく言い換えよう
まず最初に言っておくと、私はベーシックインカム反対派。結論から書くと、日本におけるベーシックインカムをすっごく簡単にイメージできる言葉で言い換える事ができるのよ。
「ベーシックインカムで毎月 10 万円配ります! ただし毎年 2% ずつ支給額が減っていきます!」
もしこんな事言われたら、さすがに誰も賛成しないでしょ。
「今年や来年は大丈夫でも 20 年後はベーシックインカムだけでは暮らせなくなりますよね?」って、誰しもが思うでしょうよ。
そうなってから年金暮らしの年寄り夫婦が暮らしていけないです、って騒いだところで遅いよ。
今回のエントリでは「なんでそんな事になるのか?」っていう考察を書いていこうかと思うわけです。
それにしても賛成派は著名な人が多い
ベーシックインカム(BI)に対する著名人の意見・発言をまとめてみた
このサイトによると、以下の錚々たるメンツが賛成派。
- 堀江貴文
- ひろゆき(西村博之)
- 橋下徹
- 竹中平蔵
こんだけの人たちが賛成するなら、もう賛成する方が正しいみたいな空気になっちゃうんだけど……。
しかしベーシックインカムは成り立たない!
唐突に必要だと思われたベーシックインカム、だけど成り立たない! だまされるな!
え、いやいや、専門家でもないのに「だまされるな」とか言い切っちゃって大丈夫ですか?
あんな著名人たちは賛成なんですよ……?
うーん、ちょっと不安になっちゃうよね。知識不足は否めないもんね。だからもう少しトーンダウンした方が俺にとっては安全なんだよ、分かってる……それは分かってるんだけども……。
やっぱ成り立たないって! だまされるな!
以下、俺が成り立たないと思う圧倒的な理由 2 つ。
- 生活保護費が圧倒的に減額される人が出てくる
- 圧倒的なインフレ圧力になる
生活保護費ってベーシックインカムだとどうなるの?
まぁ簡単に言えば「おいおい、そんな金額じゃ生きていけないだろ」ってなるんだよ。ベーシックインカムで賄える金額
生活保護でもらえる金額はいくら?誰でもわかる最低生活費の計算方法
このページによると、今の計算式に当てはめると以下のような支給額になっているんだってさ。
東京都八王子市に在住の 40 代男性 | 132,300 円 |
---|---|
愛知県名古屋市に住む70代の高齢者夫婦の場合 | 161,160円 |
千葉県千葉市に30代女性と小学生の2人で住む母子家庭の場合 | 195,180円 |
竹中平蔵の言ってる「月に 7 万円の支給」では、このいずれの場合も減額になるじゃん。
仮に 10 万円配ったとしても 40 代男性なら 32,300 円マイナス。
まぁ 10 万円配る場合の試算ってあんまり見かけないんだけど。それでもやっぱり一人暮らしの人にとっては、かなりのマイナスになるんだよ。
これってさ、一人暮らしって生きていけるか? 支給額 7 万なんかじゃ、まず無理じゃろ。 二人なら、まぁギリギリなんとかなるかなってライン。一人だったら 10 万でも無理じゃないかなぁ。
しかもしかも、これベーシックインカムと年金は一本化するっていうのが前提なんだよ。
つまりコレ、独居老人には遠回しに死ねって言ってるのと一緒。
全然「生活保護」になってないのでは?
もしそうなったら、どうやって生きていく?
そうなったら、そこに登場するのは間違いなく貧困ビジネス。一人では生きていけない年寄りを集めて、適当なアパートに 4 人ぐらい押し込めてタコ部屋作って 7 万円巻き上げる。提供するのは部屋と日に 3 度の食事。
そうしなければ、とても独居老人は生きて行けなくなる。
働きたくても働けない年寄りは、プライバシーもへったくれもない余生を送ることを強いられる。
それまでに蓄えておけって? 今この日本の経済状況で、不正規雇用だとかワーキングプアだとかが問題になっているのにそんなこと正気で言ってます? 20 年後は貧困老人で世の中あふれかえることになるのは明白よ。
そうなると、まず間違いなく「文化的な暮らしができない」人を増やすことになるよ。
インフレ圧力になるってなぜ? 何が悪いの?
そもそも 7 万円なり 10 万円なりじゃ生きていけない人が出てしまうって話に加えて、もっと悪い話があるの。それが「インフレ圧力」の話。こっちの方がヤバい。これは、独居老人だけじゃなくて二人暮らしや三人暮らしでも生きていけなくなる可能性があるんだよね。
必ず登場する「財源」の話が破滅の原因
ベーシックインカムを成立させるために「こういう風に工夫して財源を確保すればできますよ~」なんていう論調、一度は耳にした事があるんじゃないかと思うんだけども。
そもそもそうやってお金を確保して配る、という行為がインフレ圧力となり、結果的にベーシックインカムの価値を毀損するんじゃないかと思うワケです。
(なんでお金配ったらインフレ圧力になるの? って気になる方は、本エントリの最後におまけとして記載しますんでソチラご参照ください)
財源の一例を交えて、たとえ話をしよう
まずは、とりあえず「ベーシックインカムを成立させる財源確保方法」ってのを、一例あげながら話をしていきたいんだよね。その方がきっとわかりやすいから。
で、ざっくり概算している人のページがあるので引用してみるね。ちょっとドンブリ勘定な部分はあるけれど、賛成派の人達は大体こういう仮定の上にベーシックインカムを語っているから。
ベーシックインカムの財源
とりあえず、この例を使って話進めてみましょうよ。ま、この人は 5 万円配布なんだけども。7 万円配ろうとしたらもっと財源必要だけれど、ま、一旦とりあえずこの例の上で話しましょ。
どんな「財源」の話でも、その主題は共通
これ、似たような試算の話っていろんな所で目にすることができると思うんだけども、こういう「財源計算」すべてに共通する「主題」があるんだよ。それは「歳入を増やして、その分を配る」ってコト。
例えばこの引用したページでは「歳入を 90 兆円から 120 兆円に増やせば成り立つ」と言ってるワケね。
で、この人はたまたま「消費税 20% にすれば行ける」って話をしているし、それ以外ではたとえば「国債を多く発行すればいい」とかね、そういう事を言ってる人もいる。
「どのように歳入を増やすか」っていう方法は何でも良いの。そこは主題じゃない。
主題は、「歳入を増やせれば、その分を配れる」でしょ?
そこで「その歳入の増やし方は問題がある」とか「いや、問題ない」とか、そこは主題じゃないんだ。だからそこでモメるのは今後みんな止めた方が良い。建設的じゃない。
なにが「破綻」するのか?
私が言う「破綻」のストーリーは以下の流れを想定していまする。
- 歳入を増やして、その分を配る。
- 配られたお金が、そっくりそのままインフレ圧力になる。
- 物価がインフレしてベーシックインカムだけで生活していくことが困難になる。
これは、さっき書いた独居老人などの一人暮らしだけの問題じゃなくて、二人暮らし、三人暮らしでも生きて行けなくなる可能性を秘めているのね。
つまりベーシックインカムの大前提であるところの「生活保護費をベーシックインカムで代用」が成り立たなくなるっていう話。
もしそうなったら、どうする? 新たな社会保障制度でも作る? そのための費用が発生するから、新たな財源を用意し……。あれ? これ元の木阿弥じゃね? 現行の社会保障制度と同じになっちゃうんじゃね?
じゃベーシックインカム増額する? そのためには歳入増やして財源見つけないとね。あれ、するとその配った分がインフレ圧力になって……? あれ? これ元の木阿弥じゃね? 一生インフレし続けね?
ってさ、なるよね。
この状態を指して「成り立たない」「破綻だ」と言ってるんだよね。
どれぐらいインフレするの?
30 兆円のお金を配ったらどれぐらいインフレするかって想像するのは難しいねぇ。前澤でも、さすがに 30 兆円は用意できないだろうから「社会実験」とかいう下品な真似もできないだろうし……。いや、実際やられたら困るんだけど。
似たような事象を探して当てはめてみるぐらいしかできないんだよなぁ。ってワケで、ちょっと探してみた。
同じぐらい歳入の増加したケース
税収を増やして歳入を増やす、というプランであることを単純に当てはめると、同様に歳入が増えた前後の比較してみるのはどうでしょうかね。
日本において、同様に歳入が増えた年を探してみた。
で、そのケースを以下サイトから探してみた。
日本の歳入・歳出の推移
さっきの例だと歳入 90 兆円に対して 30 兆円増やすって試算だったけど、まぁコレとほぼほぼ一緒なのが 1983 年(84兆円)~ 1987 年(113兆円)かな、と。
で、この間の消費者物価指数を内閣府のページ(PDF注意)で確認してみよう。
1987年の物価 ÷ 1983 年の物価 ≒ 1.07
つまり 7% インフレするって話。
あれ? 意外とインフレしないね、って思ったでしょ。俺もそう思ったんだけども。
でも 7% って、まぁまぁしんどい金額ではあるけどね。
逆説的に言えば「受け取る金額の価値が 7% 目減りする」って意味だから、たとえば支給額が 70,000 円だったものが 65,100 円になる感覚。うーん、二人暮らしで 14 万円のうち 1 万円減額されるっていうのはなかなかしんどい気がする。
しかしこのインフレ圧力は永遠に継続する
でもこれは「市中の通貨が 30 兆円分増えたら 7% インフレ」っていう話。一度世の中に配った 30 兆円は当然世の中に滞留したままなので、その翌年にさらに 30 兆円、追加で流通通貨高が増えるワケじゃん。
つまり毎年 7% インフレ(全通貨流通高における 30 兆円の割合が薄まるので、毎年インフレ率は漸減していくが)するっていう理屈。
毎年 7% なんてインフレしたら、日本経済壊れちゃう!
でもたぶん実際はそこまでひどくはならない
というカンジで、絵空事として「毎年 7% インフレしちゃう! 日本壊れちゃう!」なんて書いたんだけれども。
実際は、そこまでひどくはならないと思う。
さっきの 1980 年代の例って、一昔前の話。 1980 年代が「一昔」であることに、おじさんは心のどこかで抵抗を覚えつつも、さすがに 40 年前は「一昔」であることを否定できない。
当時と今では、通貨と品物、需要と供給というバランスがそもそも異なっている。
実際、アベノミクスで「異次元緩和」なんてやっても全然インフレにならなかった。
アベノミクス下でのインフレ率
アベノミクスで日本国民にたくさんお金を使ってもらって 2% のインフレ率を目指したんだけど、結局「消費者物価指数」だとインフレ率は 1% 程度。みずほ総研の資料がわかりやすかったので切り貼りすると、以下のようなカンジ。
出典:異次元緩和長期化の副作用(PDF注意) |
アベノミクスで騒がれた「マネタリーベースの増加」ってヤツを散々やったんだけど、物価はピクッ! としか上昇しなかった。
※マネタリーベースは、簡単に言えば「日銀が銀行に押し付けるお金の量」の事。
参考:日銀の解説ページ
銀行は日銀からお金押し付けられるから、これを又貸ししないと損しちゃう。だから超低金利でお金貸します! って言い出すの。そうするとみんなお金借りやすいから、中小企業とかがお金借りて設備投資したりしてお金バンバン使います、結果お金が世の中にたくさん出回る事になって、インフレ率 2% を目指します、っていうロジックね。
だけど、どんだけお金配ってもインフレ率は 2% に届かなかった。
つまりベーシックインカムをしても、そこまでインフレしないだろう
まぁ難しい話は後回しにするとして(このエントリの最後に、おまけとしてなんで異次元緩和でインフレしないのかも書きます)。アベノミクスで 160 兆円ぐらいお金バラまいてもインフレ率 1% ぐらいだったんだから、 30 兆円バラまいたぐらいで 7% もインフレしないでしょ、って話ね。
私も、実際のところ 7% もインフレしないと思う。多分 2% とか 3% とか、その程度だと思う。
インフレ率 2% って言ったら、政府の目指している年間の目標インフレ率と同じ! 好都合! なんて思うかもしれないけれど、これは大きな間違いだと思う。
インフレしても支給額は据え置きになって弱者は死ぬ
7% もインフレしないにしても、原理原則として「お金配る」ってことは「インフレする」って事なんだよね。日本の経済成長が、そのインフレに勝てるぐらい上昇して、歳入が増えて、結果ベーシックインカムの歳出に多めに回せる(つまり支給額を増やせる)ようになればセーフ。そうならなければアウト。じわじわとベーシックインカムだけで生活できなくなっていく。長い時間をかけて。
そして日本の経済成長がそんなに未来あるか、と言われると……。
日本の経済成長はベーシックインカムのインフレ圧力に勝てないと思う。
ちな、アベノミクス以降の「日本の経済成長率」がコチラ。
2013 年 | 2.0% |
---|---|
2014 年 | 0.37% |
2015 年 | 1.22% |
2016 年 | 0.61% |
2017 年 | 1.93% |
2018 年 | 0.79% |
えーと…… 2 ~ 3% ずつインフレしていったら、いつかベーシックインカム破綻する未来がチラチラと見えているように感じますが……。
冒頭に書いた言い換えの意味
というわけで、長々と語ってきたんだけれども。ここまでの説明で、冒頭に書いた「ベーシックインカムの言い換え」の意味が通じたかと思うんだよね。「ベーシックインカムで毎月 10 万円配ります! ただし毎年 2% ずつ支給額が減っていきます!」
これは「支給額は増えないが、インフレするから生活が毎年少しずつ苦しくなっていく」という話の言い換えなのです。実際、今まで長々書いた事に大きな矛盾はないだろうから、概ねこの通りになっていくと思うよ。
ベーシックインカム導入した 30 年後の世界
30 年後、 80 歳の老夫婦がテレビのインタビューに答えてこう言うの。
「もうベーシックインカムだけでは暮らしていけない。家賃も払えないからホームレスになるしかない。どうやって生きていけばいいのか……」
その時の日本国民の感想はこうだよ。
「知ったこっちゃありません。野垂れ死んでください」
だって、その時にはもうベーシックインカム以外の社会保障制度は無くなっているんだから。
私の提案
ちょっと横道に逸れて、プログラマ的なざれごと
プログラマって、よく「このプログラム設計クソだから、イチから作り直したほうがマシ」って言うんだよね。でもそういう時は、大概「作り直す」より「マズい箇所だけ集中して直す」方がいい結果になるんだよ。なぜなら「この設計はクソ」って思ったとしても、実は気付いていないけれど、良い部分もあるから。業務内容をシステム化する時に、すごく自然に行けている部分が、全体作り直すと「なんでこうしちゃったの、超使いづらくなったんだけど」ってなることが往々にしてあるんだよ。
社会保障制度って、なんか今、それと同じ状態なんだと思うなぁ。
今の社会保障制度にも前提があり、ベーシックインカムにも前提がある
1960 年代に「新しく年金制度を作りましょう!」って言い出した時、制度設計の前提にしていたものが今成り立たなくなっているでしょ(たとえば人口減少とか、歳入の減少とかね)。で、そこで成り立たなくなったから、まったく新しいベーシックインカムっていう制度を作ってドラスティックに変化させましょう! って言ってるワケでしょ。
結果、ベーシックインカムの制度設計時(つまり今)の前提が成り立たなくなる時ってのが将来いつか来るハズなのね。今後の予測が正しく立てられるならいいんだけどさ。少なくとも、今の社会保障制度を設計したときは、正しく予測はできなかったんだよね。
今、まずベーシックインカム制度に変更するために払うコストをペイできるのか? って懸念があるし。
さらに「ネクスト・ベーシックインカム制度」に変更するために、またすごいコスト払うんでしょ、それもペイできないといけないんでしょ、って懸念もあるし。
特に大きな問題の部分をしっかりとパッチする方がいいのでは
インフレ率とか日本の経済成長率とかに左右されるけど、ベーシックインカムは比較的早めに制度再設計が必要となるハズなんだよね。
で、何年この制度が保つのかってのは誰にも予想できない話なの。
だったら、なるべくコストをかけずに、今の制度の無駄を省いたり、新たなパッチを当てるなりしてごまかし誤魔化し運用していく方がマシだと俺は思うんですよ。
ベーシックインカムが成り立たなくなってから、また制度の修正なりドラスティックな変化やらをしなければならなくなるじゃん。
結局、ベーシックインカムよりもさらに不利な制度に変更するじゃん。ベーシックインカムが成り立っていないなら、成り立つレベルまでサービスが低下するのは当たり前だからさ。
そうやって、ダメになっては縮小・再設計を繰り返していくのは「お先真っ暗感」がハンパないよね。
その時「ベーシックインカム導入時に言ってた事は全部ウソだったのかー!」とか、そういう無駄な反発招くことになるじゃん。国民というものは無理解なもんだからさ。 1 度は良くても 2 度目は許さない、みたいな理不尽がまかり通るんだよね、なぜか。
そういう「新たな変更への拒否感・硬直化」を避けるためにも、ベーシックインカムでドラスティックな変更をすることは避けたほうがいいと思っている次第。
マイナス所得税のように、極めてベーシックインカムっぽいけれど今の制度の流用幅が大きいものとかなら良いと思う。
もし理解おかしな点があったら、指摘してくれると私の理解も進むので助かります。
今の所は、ベーシックインカムなんて成り立たないと思うから反対ですわ~。
(本題おわり。以下はおまけ的考察)
考察 1:なぜお金を配るとインフレするの?
一般的にそう言われているよ!
まずは、とても簡単にざっくりとまとめられている日銀のページを参照してください。教えて!にちぎん
Q. 金融政策は景気や物価にどのように影響を及ぼすのですか?
A. (要約)金利が下がると、企業はお金を調達し易くなります。また、個人も、例えば住宅の購入のための資金を借り易くなります。
こうして、経済活動がより活発となり、それが景気を上向かせる方向に作用します。また、これに伴って、物価に押し上げ圧力が働きます。
というわけで一般的には「お金をバラまくとインフレになる」という見解が成り立っているワケです。天下の日銀が言うんだから間違いではありません! これは他人のフンドシだから自信満々に言えるぜ!
急激なインフレはバブルも招くかも!
本文には書かなかったけれど、ベーシックインカムには「強烈なバブル」を引き起こす可能性もあると思うんだよね。一例としてわかりやすいから本文で引用した「消費税 20% にして 30 兆円歳入増やす」という前提で話を進めるけれども。
まずベーシックインカムをスタートさせて、まず市中に 30 兆円配るとしよう。
するとその 30 兆円は行き場を失う。いやぁ、いいよ、別にみんながバカスカ買い物してくれればさ。で、この 30 兆円が消費に回ると、さっき言ったようにインフレしていくワケよ。
でもさ、消費税が 20% に増税されたら、その 30 兆円は貯蓄や投資に回るだろうね。
30 兆円貯蓄するってことは、つまり 30 兆円が金融機関の手に渡るってことになって、結局は投資に回る金が増えるって意味になる。
一気に 30 兆円もの金が、色々な投資市場にバラまかれる。それも、そのバラまきを何年も続ける。そうなったら、株式や不動産がバブルになる。これは歴史的にも、確定的に明らか。
実際コロナの給付金を 10 万円配っただけ(支給額計 12 兆円)で株式投資に資金がドッと流れて「コロナバブル相場」を作ったって話もあるぐらいだから、まずバブル相場は出来上がるとは思う。
そのバブルがうっかり弾けたりしたら、日本景気がズンドコになって歳入不足に陥るでしょ。で、結局ベーシックインカムを維持できなくなる程の衝撃走る! って可能性が。
だって単年で 30 兆円、 3 年バブル相場続けていたら 90 兆円級のバブルだよ。
つまり、良くてインフレ(弱者死亡)、悪くてバブル崩壊(日本経済死亡)。
考察 2 :「異次元緩和」でなんでインフレしなかったの?
インフレしなかった理由は、まぁハッキリ言って良く分かんないんだけど。市中の通貨は狙い通り増えていた
異次元緩和で、実際市中に出回っている通貨の総量は増えているのよ。日本銀行・マネタリーベース統計
ここの「時系列データ」のエクセルを開いてみると「市中の通貨総量」が分かるんだよね。で、それを「異次元緩和」の前後で比較してみると……
日銀・黒田総裁が就任した 2013/03 時点で、市中の通貨総量は約 88 兆円。
そこから異次元緩和を経て 7 年経過した今、市中の通貨総量は約 119 兆円。
つまり、流通しているお金は 10% 増えてる。
単純に通貨の量が 10% 増えたんなら、モノの価格が 10% 増えたって別に異常じゃないと思うんだけどさ。結果、全然インフレしなかった。
その理由は、たぶん、大きく分けて 3 つ理由があると思う。
- 企業がお金借りてくれない
- 企業が給料増やしてくれない
- 供給(つまり製造業)が発達しすぎた
1. 企業がお金借りてくれない
まず「企業がお金借りてくれないよ」って事について書いたページを参考までに貼っておきます。マネタリーベースを増やしてもマネーストックが増えない理由
このページでも触れられているように「マネタリーベース」を増やしても「マネーストック」が増えなかったんだとさ。
※マネーストックとは
簡単に言うと「銀行が世の中に放出したお金の総量」のこと。
教えて!にちぎん マネーストックとはなんですか?
最初に参考で貼ったページで語られているのは「そもそも超低金利だったから、めちゃめちゃ借りやすかった。元々需要の上限いっぱいまで貸していた。今更マネタリーベース増やしても無意味だった」という話。
なるほどね、なんか正しそうな気がする。
まぁその理由が正しいかどうかはさておき、結果マネーストックが増えなかったのは事実。つまり企業がお金借りてくれなかった。
それはつまり、設備投資費とかが増えないことを意味するワケ。結果、そこまで消費が増えずにインフレしなかった、という話。
まぁ実際に使われるお金が少ないんじゃ物価あがらないよね。
2. 企業が給料増やしてくれない
これは 1. と表裏一体みたいな話なんだけど。企業が設備投資費増やさない →
商品の売れ行きは変わらない →
商品の値段はそのまま →
つまり企業の利益もそのまま →
だから給料もそのまま
っていう循環が出来上がってる。
実際、アベノミクス以降も給料はまったく上がってない。
世帯平均所得は552万円…世帯あたりの平均所得金額推移をグラフ化してみる(最新)
それに加えて、仮に利益が増えた会社があったとしても、その利益を「企業内留保」として溜め込んで社員なり株主なりに吐き出さないようにしている。
内部留保、7年連続で過去最大 18年度の法人企業統計
企業は金を貯めるし、給料増やさないし、ってことで国民が使えるお金は全然増えなかった、って話。
そりゃインフレしねぇわ。
3. 供給(つまり製造業)が発達しすぎた
これも、まず供給発展しすぎワロタって話が書いてあるページを参考までに貼っておきます。異次元緩和でも日本にインフレが起こらない極めてシンプルな事情
ここで書かれている事は、簡単に言うと「インフレ圧力はあるのに、製造業の効率化がスゴすぎて値上げしないで作れてしまう」って話。
なるほどね、たしかに言えてるよね。2010 年より前と後では、製造業の生産効率には大きな差が出てると思う。とにかく IT、システム化による効率上昇が甚だしい。
いくらインフレ圧力があっても、それを効率化で飲み込んでしまうワケよ。
これ、かなり新時代的よね。今までの為替コントロールとか、もうアンコントローラブルな所まで来ているな、と。そういう感じするよね。
だからこそ仮想通貨とか注目されつつあるんだろうけれども。
政府や中央銀行の政策では、実はもう貨幣価値ってコントロールできない領域に来ているのではないか? という、かなりオソロシイお話。
ベーシックインカムは直接国民に金配るからヤベーかも
で、上記したうちの 1. 2. についてなんだけど。「国民に金が渡らなかったからインフレしなかった」という理屈については、ベーシックインカムには当てはまらない。何しろ直接国民に金を配るからね。
国民に直接金を渡せば極めて流動性が高くなると思われるので、インフレ圧力もアベノミクスの比ではなくバン! と跳ね上がるのではないかな? という気もする。
そこら辺は専門家じゃないからイマイチ分からないのだけれど。
でも異次元緩和よりはインフレ圧力高くなることは想像できるんだよなぁ。
やっぱベーシックインカムやばくね……? マイナス所得税からスタートしようよ……。
6 件のコメント:
comment id : 3782400321199224371
リンク先をみても、「BIを導入しないと日本の将来はない!」わけではないと賛成派もわかって発言しているように読み取れます。
つまりは、BIのシステムが従来の社会保障の欠陥を補えるのではないかという「提案」であって、現行の社会保障制度の改善案を模索しているように思えます。
そもそも、BI賛成派は「これから変化する社会」を見据えて、保証制度(あるいは保証制度の対象者)を変えていこうとしているのに対し、(当たり前ですが)反対派、慎重派は現在の社会を見て判断しているわけですから、なかなか折り合いがつかないのではないかと思います。
本エントリーでは、コストと継続可能性の点から指摘しておりますが、BIが持続可能な社会的条件などを考えてみるのもおもしろいかと思いました。
次回の投稿も楽しみにお待ちしております。
comment id : 2973152314566810847
気になったのは、
・支給額のインフレ調整すればいいだけでは?(現状の年金にもその仕組みがある)
・重要な論点は「歳入・歳出の多寡」ではなく、「歳入と歳出の単純化による官僚機構の整理」で、
民間に労働力を回せるようになることで、経済の活性化を期待するところにあると思う。(個人的意見)
業務の自動化が進んでいる流れ(雇用確保の難化)とは相性が悪いけど・・。
網からこぼれる人を掬うために結局複雑化していくだろうという指摘はその通りなんだけど、
一度リセットしなきゃどうしようもないくらいに現状はひどい って認識かな。
かかるコストがサーバー維持費ではなく人件費となると、システム屋さんでも考えは変わってくるのでは?
comment id : 3692264077256183718
> BI賛成派は「これから変化する社会」を見据えて、保証制度(あるいは保証制度の対象者)を変えていこうとしている
その意図は分かるつもりなんですよ。確かに今のままではダメでしょう。
社会保障が手厚すぎるのを、なんとか削ろうというのも分かります。けど、それを黙って、だまし討ちで変更するのはダメだと思うんですよね。
アメリカだって、なんだかんだ社会保障制度ありますからね。相互扶助って国というコミュニティを作ることの目的の1つのハズなので、やっぱそこを無秩序にカットする方策を模索するのはいかがなものかと思っています。
> BIが持続可能な社会的条件などを考えてみる
うーん、 BI はどうやってもお金配っちゃうんでねぇ……。マイナス所得税方式だったらいけるとは思うんですけどね。
まぁ「こうすれば行ける」って話をするのも悪くないですね。
comment id : 6189029982201408764
> ・支給額のインフレ調整すればいいだけでは?(現状の年金にもその仕組みがある)
支払う母数がでかいので、現状の社会保障よりも調整による歳出の拡大が大きいですよね。
インフレ調整するために支給額が増えると、それが再びインフレ圧力になって無限ループするかなぁと思います。
また、インフレ率よりも経済成長率が低いと歳入が追い付かず支給額が増やせないって事になりそうです。
> 「歳入と歳出の単純化による官僚機構の整理」
これね、たまに聞くんですけど、優先順位をつけて1つずつ効率化するのが理想だと思います。
政治的に障壁がデカすぎるから、面倒だからベーシックインカム、という意見ならある程度理解しますが、ちょっと同意はできません。
今、もっとも無駄を垂れ流していると考えられているのは、おそらく国民年金・厚生年金あたりの巨大な年金機構だと思います。
たかだか支払い額を算出して、支払ったかどうか把握して、支払うべき人に支払う。それだけの事なのに、ナントカ保険組合だのナントカ共済だの人がいすぎます。
年金を国が運営するものに 1 本化するだけで大分全体としてのコストが下がると思います。
そもそも税金取る作業は無くならないので、収入の把握は今後も続きますよね。そうしたら社会保障の支払い額なんかも簡単に算出できます。
ですので国税・税務署の 1 部署に「社会保障部」みたいなのを作って支払額算出・徴収作業を行えば効率化できるのでは。
そうやって効率化・単純化できると思うんですよね。ベーシックインカムでドラスティックに変えなくても。
しかし、それを語ろうとすると、どういう作業にいくらかかっているのかザックリ算出しないといけませんね……(地方公務員の費用は国のデータからは見えなかったり、地方交付税として見えなくなっていたりするので、各都道府県のデータ集めないといけないような気がする……)。
面倒くさい! また別の機会に!w
> 一度リセットしなきゃどうしようもないくらいに現状はひどい
これ、たぶん多数の人が思っているんでしょうね。
「全部ブッ壊さなきゃ改善できない」派から「政治的に抵抗が強すぎて、逐次改善なんてしてたら何十年かかるか分からない」派まで、さまざまいるとは思いますが。
私は、時間がかかったとしても逐次改善していくのがいいと思います。まずは年金の効率化、次に生活保護のマイナス所得税化、それでかなり改善するとは思います。
本当は医療費を圧縮できるなら一番いいんだけど……(内科医なんて AI の方がいい)。
> かかるコストがサーバー維持費ではなく人件費
「今のクソシステムだと人件費がバカみたいにかかるから、人件費がゴッソリ削れる新しいシステムにしましょう!」というときに、新しく設計して、結局「クソシステムだったころにはできてた○○ってできないの? すげー不便なんだけど」ってなる事があるので、結局は一番コストかかってる部分をまず修正するのがいいと思いますよ。
100 人必要だったシステムを、まず 60 人で動かせるように修正して、次に 40 人、次に 30 人、ってやっていけばいいという意味です。
最初から 100 人から 10 人にする必要があるほど切羽詰まってないじゃないですか。日本は幸い国債刷りたい放題なので。
comment id : 7399798697683049957
丁寧な返信ありがとうございます。んで、
>インフレ調整するために支給額が増えると、それが再びインフレ圧力になって無限ループするかなぁと思います。
ここの話と、
>日本は幸い国債刷りたい放題なので。
ここの話が最後に衝突して ん? ってなりました。揚げ足取り気味の点ではあるけれど。
>また、インフレ率よりも経済成長率が低いと歳入が追い付かず支給額が増やせないって事になりそうです。
先の「いずれまた環境に制度が合わなくなる」の根幹がここですよね。
経済がどうなるか結局は読めないし、読んだつもりで決め打ちはリスクだし。
そういう点でドラスティックなやり口もまたリスクというのは分かります。
ただ、現状が分けわからんほどに複雑な中で、枝葉を修正した上で、さらに全体のバランスを取ろうとすれば、
際限なく複雑化していくし、終わりがない。いつか確実に運用面で行き詰まる。
だから定期的なリセットはあった方がいいんじゃないか って感覚かなぁ。
そのスタートの議論として、もしくは制度の軸としてベーシックインカムが分かりやすいという話。
これって要するに「健康で文化的な最低限度の生活」は・・1人〇〇円です! っていう生存権の数値化なんですよね。
「健康で文化的な最低限度の生活とは何か」という行政の使命をぶん投げて、1人いくらです!って、なんかロックじゃないですか。
しびれますよね。憧れます。そんな単純な理由で支持されてる気がします。
>ナントカ保険組合だのナントカ共済だの人がいすぎます。
効率化のために民営化されたのが健康保険組合なので・・ 公営に戻しても繰り返すだけというか、
赤字の保険組合ばかりだから、かえってひどいことになるかもしれない・・。
まあ効率化については、今進んでいるデジタル化でまずどうなるかってのを見てからってのはあるかもですね。
どんだけ複雑でもシステムに乗るなら別にいいわけで。誰も理解できないものになるかもしれないけど。
comment id : 3230769104871114399
>話が最後に衝突して ん? ってなりました。
これは、程度問題の話です。30兆円と、今の社会保障制度で足りない1兆とか2兆とかを国債で取ってくるのとでは影響が違いますから、まぁ今の不足分ぐらいだったら影響軽微でしょ、というつもりで書きました。
>際限なく複雑化していくし、終わりがない。いつか確実に運用面で行き詰まる。
ここが実は幻想なんじゃないかなぁという気がしています。実際、どうなったら行き詰まるか、具体例が思いつきません。
今の制度の枠組みを維持しつつ、シンプルにしていくことは可能なんじゃないかなぁ。それが「マイナス所得税」の導入だと思っています。
>定期的なリセットはあった方がいいんじゃないか って感覚かなぁ
この気持はよく分かるんですけどね、それでも「今の改善点をいちいちあげていくよりゼロから作った方が楽」というのだと、また別の問題が出て来る可能性高いと思うんですよ。せっかく問題点が炙り出せる状態なんだから、またリセットして問題が出てくるの待つ(つまり困った人がたくさん出てくる状態を待つ)よりは、できる改善を順次していくのが理想だと思います。
>「健康で文化的な最低限度の生活とは何か」という行政の使命をぶん投げて、1人いくらです!って、なんかロックじゃないですか
それは、まぁなんとなく分かりますw ロックだな、ってのも同意。数値化して分かりやすいから支持される、ってのも同意。
だけど、そこに罠があると思います。もんのすごくシンプル化して分かりやすい! きめ細かくルール設定するのなんかより、ベーシックインカムの方が公平だ! っていうのは、逆に問題の所在が曖昧になっていく端緒だと思います。
極端なシンプル化ってポピュリズムの特徴です。危険な予兆です。
>効率化のために民営化されたのが健康保険組合なので・・
まぁそこが今や非効率だと。コンピュータ社会の到来によって、そんなに人要らなくなってしまいましたからね。人減らしましょうよ。
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